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カンファレンスレポート

2006年4月12日 掲載

12日

Mr. Peter Morville photo 12日 ピーター・モービル氏のキーノート

アンビエント・ファインダビリティ〜情報の「見つけやすさ」をめぐる技術とビジネスの新潮流〜

現実空間におけるユビキタスコンピューティングとインターネットのそれぞれにある莫大な情報同士が錯綜する全く新しい世界において、人はどのように情報を探索していくのか? ピーター・モービル氏は、ともすれば悲観的になりがちな問いに対して、こう語りました。「あたかも庭を散策するように、様々な情報との出会い、触れ合うことを楽しもうではないか」と。こうして他者と質の高い情報を共有しあい、よりよい社会をつくっていこうという楽観的な姿勢をとっていこうと参加者に呼びかけました。

欧米における CMSの現在—コンテンツマネジメントのための新しい国際的実践コミュニティ「CM Pros」

ボブ・ドイル氏はこの講演の冒頭で、「今や、世界中で2000を超えるCMS製品が存在している」と指摘。特に欧米のCMS市場では、オープンソースへの高い注目、ASPやウェブサービスの隆盛、そしてグローバリゼーションが進んでいるほか、コンテンツとデザインを分離した形で記述できるXMLエディターの利用も増えつつあると、最近の動向を整理しました。また、氏が取り組んでいる「CMS Review」や「CM Professionals」の活動紹介を通して、多彩な製品に対する的確な評価や用語の定義、専門家同士の交流の重要性を指摘しました。

アジアにおける CMS の現在—日本の CMS 市場が発展していくために必要なこと

韓国のCMS第一人者であるオ・ゼチョル氏によれば、アジアのCMS市場は欧米とは違ってウェブコンテンツのマネジメントシステムに特化しているのが現状だそうです。さらに日韓でもユーザーニーズや利用実態で大きな違いがあると指摘しました。「CMSは魔法のツールではない」との持論に従い、最終的なゴール設定や明確なロードマップの策定など、システム導入を成功に導くには9つの条件があると語りました。また、日本においてはまずは氾濫している技術用語や概念の整理、成功事例の共有、交流コミュニティの確立が急務だと提言しました。

日本における CMS の現在—国内ITソリューション企業による CMS プロジェクトの実際—

今回のカンファレンスを締めくくるセッションでは、国内でCMSを使ったウェブサイト構築を手がける4社の実例報告をもとに、海外ゲストも交えながら、CMS導入プロジェクトの成功要因や直面している課題について突っ込んだ議論が行われました。プロジェクト成功のポイントとしては、「シンプルに始めること」「リーダーシップの確立やモチベーションの維持向上」「クライアント側と提供側での役割分担」といった発言があったほか、導入を検討するユーザーに対しては「異なる部門にまたがる調整や推進役を確立する」「漠然でもいいから最終的なゴールイメージを描く」「なるべく早くに相談を」といった要望が出てきました。

11日

BOF photo 11日 BOFの様子

Web2.0 時代の情報設計〜情報アーキテクチャと検索の未来〜

ピーター・モービル氏によるこの講演では、まさに現在進行形で進んでいるウェブの大きな変革と、フィジカルな現実世界とを結びつける新しい時代の情報設計のあり方を見据える、意義深いものとなりました。「ジオスペーシャルなウェブの出現によって、我々の周りに存在する全てがファインダブルなものとなっていく中で、人々はお互いに手を携えながら集合的な知性をつくっていくだろう」というモービル氏の展望は、ユビキタスコンピュ−ティングが我々にもたらすことの本質について、印象的に示してくれました。

ユーザーエクスペリエンス最適化のための取り組みおよびテクノロジ

マイクロソフトの磯貝氏は、同社内で取り組んできた独自のペルソナ・シナリオ法やユーザビリティテストなどの活動を丹念に説明しました。その上で、新しい動きとして「WPF」や「XAML」といった同社が提唱するテクノロジーがもたらすユーザーエクスペリエンスの可能性をデモンストレーションを通して紹介しました。これらの新しいテクノロジーによって、「デザイナーとエンジニア間での連携を容易にし、エキサイティングなユーザーエクスペリエンスを実現するだろう」と語っていました。

UCD(User-Centered Design)とユーザーエクスペリエンス

日本IBMの山崎氏は、半世紀におよぶIBMのデザインの歴史を踏まえながら、これまで注力してきた氏のデザイン活動が人間中心の手法から、よりユーザーの全体的な経験をトータルに捉える考え方へと発展してきたことを実例を交えながら解説しました。そして、より「気持ちのいい体験」を提供するスマイルデザインを実現するアプローチとして、アートのような作り手の感性に基づく方法や、感性的な表現から論理を導き出す方法、それに工学的に感性を捉える方法の3つがありそうだとの仮説を提示しました。

Adobe User Experience——アドビでのユーザーエクスペリエンス・デザインの展開

エールリック 氏と山崎氏は、アドビにおける製品開発におけるユーザーの視点に立った評価や改善の活動について、日米の両方における取り組みを紹介しました。特に、「マジックデバイス」という架空のモバイルのモックアップによるデザイン活動は、ユーザーの参加や彼らからの発想を引き出しながら、企業とユーザーとが「ともにデザインする」という新しい可能性を提示していました。

BOF——CMS で実現するユーザーエクスペリエンスの可能性

一日目の締めくくりとして、IAおよびインタラクションデザインと、CMSという2つのトラックで発表してきたゲストスピーカーが一堂に集まりました。ここでは、それぞれのトラックでの内容の簡単な振り返りと互いの分野をまたいだかたちでの意見交換が、参加者からのコメントや質問も交えながら展開されました。

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