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CMS Watch:RFIの真実 /RFIを活用して正しいベンダー候補を選ぶには
2007年10月12日 掲載
過去10年間、私の普段の仕事はたいていが、「リクエスト・フォー・インフォメーション(RFI=情報提供の依頼)」と「リクエスト・フォー・プロポーザル(RFP=提案の依頼)」、すなわち世界の多くの場所では単に「提案書」と呼ばれているものに関係してきた。自分でもRFIやRFPを書いてきたし、それを受けて反応する側に回ったこともある。はたまた、それらを評価したり、反応に基づいて決定を下したりする立場に立ったこともあった。
このプロセスはそもそも、ビジネスにおいて最もヤボで、あまり効果的でないプロセスと言えるだろう。しかし、それはそれとして、現状ほかに良い方法がないからには、まだしばらくの間は、このプロセスを使わなければならない。というわけで、今回の記事では、ウェブ・コンテンツマネジメントシステム(CMS)やドキュメント・マネジメントシステムを購入するにあたって、このプロセスを最大限に活用するためのヒントをご紹介する。
通常、IT製品をこれから導入しようという買い手は、RFIをないがしろにしてでも、RFPに多くの労力を割くことが多い。実際、RFIがまったく行われないこともしばしばある。しかし、これは間違った考え方だ。RFIの目的は、意思決定のための情報収集だ。が、御社の要件には応えられないサプライヤや、御社のプロジェクトを担当すべきでないサプライヤを早い段階で除外するにあたって、RFIは重要なツールとなる。
この段階を経てこそ、続くRFPは、よく練られ目的もハッキリしたプロジェクトの重要なメカニズムとして機能できるようになる。そしてこの段階では、すでに選りすぐられたベンダー(ソフトウェア会社とコンサルティング会社)、つまり要請された仕事をこなせるベンダーだけと、話をすることになる。こうして少数の候補に絞り込むうえでフィルターとなってくれるのが、効果的なRFIのプロセスだ。
選定リストの悪い例
RFPを受けて出される提案を、独立したサードパーティとして評価した経験がある我々のような人間の間では、まったく互換性のないベンダーやサプライヤが、どういうわけか絞り込んだ後のリストに名を連ねているという話は、あまりにも有名だ。絞り込んだ後のリストというのは、御社のニーズを満たせる会社だけが含まれ、それ以外の会社が混ざっていてはいけない。
にもかかわらず、私がよく目にするのは、次のようなパターンだ。
- 会社持ちのランチで懐の深さを見せつけたか、あるいは単に脅迫まがいのことをしたかのどちらかによって、(早い段階で除外されるべきだったにもかかわらず)最初の足切りをくぐり抜けた、きわめて「押し」の強いベンダーが1社。
- 「つきあいがある」という以外、とりたてて理由もないのに候補に含まれてしまった、現在の取引先ベンダーが1社。
- RFIを完全に誤解したにもかかわらず、「コンサル風」の難解な言語を見事に並べたてたために、リストに残ったベンダーが1社。
- プロジェクトにふさわしいかどうかにかかわりなく、最初の選定では常に候補として残る、誰もが名前を知っているベンダーが1社(ここでは名指しはしないが、みなさんがご想像のとおり)。
- マイクロソフト。値段が安いように見えるから。
これはまったくもって、ベストの絞り込み方法とは言えない。しかも、何よりも気になるのが、このような不適切なターゲットを選定するにあたって、しばしば多額の予算がつぎ込まれているという点だ。
このような状況を避けるには、RFPだけでなくRFIを出すことだ。もちろん、RFIをするにも、正しいやり方というのがある(編集注記:バド・ポーター・ロスが書いた記事では、RFPについてのアドバイスが紹介されている)。以下に示すのは、私が経験から得た実践的なヒントだ。これを利用すれば、サプライヤとしての私の仕事は楽になるが、そんなことよりももっと重要なのは、この記事をお読みのみなさんの仕事が楽になるということだ。
効果的なRFIを実践する7つのステップ
- 単純なアップグレードでないかぎり、そもそも新たに技術を買い足す必要があるのかどうかを決める前に、常に社内で精査・分析を行うこと。過去2年ほどの間に私が扱ったソフトウェア開発や統合のプロジェクトでは、すでに導入済みのソフトをリストアップしたRFIを目にすることが増えたが、そのリストたるや、あまりにも包括的で、もうこれ以上技術を買う必要はないと言わざるを得ないようなものが多かった。このような企業は、すでに持っているものをどう活用すべきかを、むしろ考え始めるべきだ。膨大なRFIのステップはやめにして、その分、わずかなお金を費やして、手持ちの資産をより効果的に使うアドバイスを求めるべきだろう。
- もしも本当に新しい技術が必要なのであれば、何がほしいかを明確にすること。ウェブ・コンテンツマネジメント(WCM)、ドキュメントマネジメント、エンタープライズ・ドキュメントマネジメント、エンタープライズ・コンテンツマネジメント、レコードマネジメントといった言葉が入れ代わり立ち代わり出てくるRFIを、私はこれまで数知れず目にしてきた。そして今では、ECMという言葉を、非構造化データの管理にかかわるほとんどすべてのものに使う人が増えている。このような悪しき慣例は、決して見習わないでほしい。何を求めているのかを明確に示すことだ。複数のウェブサイトを管理するのが目的というプロジェクトと、数多くのフォームを処理するのが目的というプロジェクトでは、まったく異なるニーズが存在するはずだ。
- どんなRFI文書においても、プロジェクトの目的は一番に書くこと。何を達成したいと思っているのか。これを最初に率直に述べたうえで、クリエイティブかつコスト効率の高い答えを示してくれるよう、ベンダーに求めるべきだ。コンテンツマネジメントは、ビジネスプロセスそのものにかかわることであり、ユーザに受け入れてもらえるかどうかは、スピードとフィードにかかってくる。この2つの課題に対処し、強力なパートナーシップを提案するよう、サプライヤ候補に求めるといい。
- 同様に、どんなタイプのCM導入でも、必ずある程度はコンサルティング業務が絡んでくる(大規模なECM導入プロジェクトならば、間違いなく、これがコストの大きな部分を占めるだろう)。ソフトウェア・ベンダーに加え、SI企業やその他のコンサルティングなどにも、RFIの送付を検討すること。サービス企業からは、違った種類のレスポンスが得られるだろう。それは、ソリューションの候補を絞り込むにあたって、役には立たないかもしれない。が、これらの提案から何かを学び、選定チームが最終的にRFPを送り出す際、ベンダーに向けるべきかインテグレータに向けるべきかを明確に理解するうえで役立つ可能性はある。
- RFIを書くプロセスで、ECMやWCMベンダーに助けを求めないこと! というと、あまりにも当たり前のことに聞こえるかもしれない。が、私はこれまで、特定のベンダーの「匂い」があまりにも明らかについたRFIが送られたのを、驚くほど何回も目にしてきた。このようなRFIに対して、競合するベンダーが力の入ったレスポンスを返してくることは期待できない。このプロジェクトは、御社にとっては1回きり(願わくば)のことかもしれないが、ベンダーというのは、CMの世界で生きている。ライバル会社の匂いは1マイル先からでも嗅ぎ分けられるのが彼らなのだ。
- プロジェクトの早い段階で既存顧客のヒアリングを行うと明確にすること。そして、このプロセスを重視していることも伝えるべきだ。実際にそのベンダーの既存顧客から話を聞く際は、どんなかたちであれベンダー自身が介入しないよう、確認する必要もある。そして可能であれば、その既存顧客の現場を訪ねる。ベンダーの付き添いはなしに。ただし、何社も顧客を紹介してもらうことはない。これはあくまでRFIであって、RFPではないからだ。
- ベンダーの技術評価レポート購入を検討すること(CMS Watchと私が以前に勤めていたOvumは、どちらも質の高いレポートを出している)。2000~3000ドルのレポートが探している答えをすべてもたらしてくれるというのに、5万ドルも費やして自分で評価することはない。この種の既存レポートは、ある種のベンダーを最初から除外するのに役立つかもしれない。例えば、技術的に互換性のないベンダーなどだ。さらに重要なのは、あるベンダーの特定ソリューションが特定のシナリオに対して、どこまで効果的に作られどこまで幅広く導入されているかを、こうしたレポートによって知れることだ(ベンダーは常に除外されまいとするということを、決して忘れてはならない!)。
ベストマッチを探す
もちろん、ここで挙げたポイントは、すべて常識的なことだ。しかし、常識というのが、必ずしも常に認識されているとは言えない。そして、ついつい技術の魅力にほれ込んでしまうという側面にも、我々は注意しなければならない。ほとんどのCM技術は、有効なビジネスプロセス、ビジネスプロシージャに多くを依存している。つまり、こうしたニーズを最優先にし、ツールとは切り離して考えなければならないということだ。
曖昧模糊としたRFIを送り出して、ECMベンダーにウェブサイトの問題解決を求めようものなら、最終的な成功の可能性は立ち消えてしまうだろう。早い段階から専門家のアドバイスを仰ぎ、最初からニーズと要件を明確にすることだ。結局のところ、出回っているCM技術はかなり成熟していて、かなりのタスクをうまくこなせる。自分に合ったベストマッチというのは、価格、パフォーマンス、機能、ユーザビリティの総合評価で決まってくる。私自身が最初からとにもかくにも除外するというベンダーは、ほとんどいない(あくまで「ほとんど」だが)。御社のニーズに最も適したものを見つけるのが、ここでの目標でなければならない。そして、それを達成するのに、RFIが役に立つ。
アラン・ペルツ=シャープは、Wiproの製品戦略およびアーキテクチャ・コンサルティング部門で主任ストラテジストとして働いている。前職では、業界分析を手がけるOvumの北米担当バイスプレジデントを務めたこともあり、ドキュメントマネジメント、ウェブコンテンツマネジメントの世界では17年のキャリアを持っている。ドキュメントマネジメント、ウェブマネジメント、記録管理といったトピックで、数多くの記事や論文を執筆し、世界各地のイベントでも講演している。
この記事の原文「Getting to the right shortlist with an RFI」は、2005年11月15日、「cmswatch.com」に掲載された。
本サイトに掲載している CMS Watch の記事は、CMSWatch.com より許可を得て、翻訳・転載しているものです。
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