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『コンテンツマネジメント パーフェクトガイド』活用のヒント(2)
2008年2月27日 掲載
「コンテンツ」って何だろう?
本記事は、『コンテンツマネジメント パーフェクトガイド』 [mycom.co.jp](毎日コミュニケーションズ刊)を読み進めるにあたっての「とっかかり」や「活用のヒント」を提供していくことを目的としています。連載第2回目の今回は、「コンテンツマネジメントのプロセス」を理解するために役立つ内容を、本書から抜粋してお届けします。
皆さんもご存知のとおり、本書はもちろん、コンテンツマネジメントについて書かれたものです。しかし、そもそも「コンテンツ」という言葉の意味がはっきりしていない方や、自分自身のとらえ方が合っているかどうかについて、漠然とした疑問を感じている方も多いと思います。また、「データ」や「情報」といった、似たような語感を持つ言葉の定義との線引きも、よく議論の的になります。皆さんの解釈はいかがでしょうか。
そこでまず、本書で扱われている「コンテンツ」の概念について、少し整理してみましょう。Chapter 1「データ、情報、コンテンツを定義する」の中に、次のような一文があります。
簡単な例を挙げるとすれば、この Chapter のタイトルは、一片の「データ」だ。そして、すべての Chapter のタイトルと見出しを集めれば、目次と呼ばれる「情報」になる。この情報を本の冒頭に入れれば、読者はそれを使って本をナビゲートし、何か価値のあるものを見つけられるようになる。これが「コンテンツ」だ。
つまり「コンテンツ」とは、利用者の状況や背景(「コンテクスト」と呼ばれます)に合わせて用いられることで価値を生む情報であると説明できます。何らかの情報がなければ、コンテンツも存在することはありません。しかし情報だけでなく、利用者とそのコンテクストがあって初めて、コンテンツといえるものの存在が明らかになってくるというのが、本書で一貫して用いられている考え方です。
本書のPart 1「コンテンツとは何か?」では、ここに挙げたごく基本的な考え方やロジックを中心に、さらにコンテンツの表現や構造、機能性などについての解説が展開されています。さきほど挙げた一文を覚えておくと、きっと役立つはずです。
ところで、ここで挙げたような「データ」「情報」「コンテンツ」の事例に当てはまるような素材は、皆さんの回りにもたくさんあるのではないでしょうか。自分のコンテクストに合わせて様々な事例をじっくり考えてみて、それでもよく分からない点や混乱している点を解決するために、本書を活用するのも大変有効でしょう。
コンテンツマネジメントを理解するための上位概念
さて、利用者のコンテクストに合わせた情報(コンテンツ)を管理(マネジメント)することは、そう簡単ではありません。そこで話は、「コンテンツマネジメント」というテーマに移っていきます。
本書のPart2「コンテンツマネジメントとは何か?」の冒頭では、コンテンツマネジメントとはどのようなものかを上位概念から段階的に考えていく手掛かりとして、異なる5つの観点から定義が行われています。
- ビジネスゴール的観点から
- 分析的観点から
- 専門的観点から
- プロセス的観点から
- 技術的観点から
そして著者(ボブ・ボイコ氏)は、「コンテンツマネジメントはこれらすべてのことであり、すべてを行うことだ。秘訣は、これらすべてを包括できるような、体系化を行うことである」と述べています。
そしてここに挙げた5つの観点は、組織独自のシナリオに左右されることなく、常に有効であり、必須のものといえます。このように、中核に置かれるもの(ここでは「コンテンツマネジメント」)を、複数の上位概念からとらえ、そららをバランスよく調整していくことこそ、著者が本書を通じて読者に伝えようとしているビジネス上の基本思想なのかもしれません。本書の[デザイン・構築編]では、こういった俯瞰的な視点を、「ダッシュボード」というシステムに落とし込んで具現化していく試みも紹介されています。
コンテンツマネジメントの仕組み
ウェブ CMS
コンテンツマネジメントを理解していくには、上位概念から俯瞰するだけでなく、その仕組みやプロセスから具体的にとらえてしていくことも必要になってきます。
例えば、Chapter 6「コンテンツマネジメントを理解する」の「6.コンテンツマネジメントはコンピュータのインフラだ」では、次のようなシステムの構成を例示しながら、そのリスクや効果について、読者が自分に合ったスケールのコンテンツマネジメントの仕組みをイメージしていくことができるように工夫されています。
- HTMLページをあらかじめ用意しておく「静的なウェブサイト」
- データベースを用いて動的にHTMLページを生成する「動的なウェブサイト」
- コンテンツを管理しながら、静的、または動的なウェブサイトを運用する目的の「ウェブ CMS」
- ウェブサイトだけでなく、並行して印刷物などの発行物も生成する目的の「フルCMS」
- 組織全体における、極めて広範囲のコンテンツまでを網羅して管理することを目的とする「エンタープライズCMS」
読者の皆さんにとって、こういった仕組みにを体系立ててとらえ(直し)ていくことは、来るべき CMS構築プロジェクトに備えるための良い機会になるのは言うまでもありません。しかしそれだけではなく、皆さんが明日からすぐにでも、コンテンツの扱い方や流れを効果的な方向に変えていく「スイッチ」を入れる役割も果たすはずです。
コンテンツマネジメントの基本プロセス
CMSの概観
最後に、本書の重要なコンセプトに位置づけられており、本書の構成自体とも密接に対応付けられている、コンテンツマネジメントの基本プロセスについて触れておきましょう。
前回、「本書のコンセプト」として示した、「コンテンツマネジメントとは、情報や機能を収集(Collect)し、管理(Management)し、発行(Publish)するプロセスである。」という考え方の概略が、右図に描かれています。本書では、この図中にあるアイコンの1つひとつが解説され、さらに細分化した役割として定義付けられ、それらを分析するための手法を伴って、やがて結び付けられていきます。
そして、ここにある「コンポーネント」という言葉が、具体的に何を意味するものなのか。情報をどのようなかたちでコンポーネント化しておけば、一連のプロセスとしてシステムで扱えるようになるのか。これが、コンテンツマネジメントのプロセスを読み解くための最大のテーマともいえます。この点に興味を持った方で、本書を片手にご覧になっている方は、随所に出現する「(コンテンツ)コンポーネント」というキーワードを繰り返し追ってみてください。この言葉が持つ、実践的な意味が分かってくるはずです。この本がお手元にない方は・・・、ぜひこれを機に購入することをお勧めします。書店での立ち読みだけで理解するには、若干複雑な概念ですので!
次回は、本書の全体像をとらえていただくためのポイント第3弾として、コンテンツマネジメントのプロジェクト計画の考え方などについて解説していきます。
関連情報
今回のキーワード(五十音順)
コンテクスト、コンテンツ、コンテンツマネジメント、コンテンツマネジメントシステム(CMS)、コンテンツマネジメントの基本プロセス、コンポーネント、情報、データ
本記事について
- 本記事は、著者の許諾を得て、書籍『コンテンツマネジメント パーフェクトガイド』 [mycom.co.jp](毎日コミュニケーションズ刊)の内容を抜粋、加筆、再編集してご紹介するものです。
- 本記事は、書籍『コンテンツマネジメント パーフェクトガイド』を片手に記事を読んでいただけるよう、もしくは、本書の購入を検討する際にその有用性を端的に理解していただけるよう、できる限り書籍内での関連箇所を明記しながら、同一の表現をとるように配慮しています。ただし編集上の都合により、それらが完全に保証されない場合もありますことを、ご了承ください。
- 本記事中で「Part」「Chapter」として示される引用箇所と書籍全体との対応については、本書の目次をご覧ください。
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