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情報マネジメントの最先端 -文書管理からCMS に至るまで

2008年8月27日 掲載

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DESIGN IT! magazine』vol.1の特別企画「Special Report」を掲載しています。

徐々に普及が進むコンテンツマネジメントシステム(CMS)。だが、一般に「Webコンテンツ管理向け」と狭く捉えるため、CMSを構築する本来の意義を見失いがちだ。たとえ、CMSを構築する目的がWebコンテンツ管理だとしても、本来の意味を理解し、それを踏まえて全社にわたる情報マネジメントの礎とすることは有効策となりうるだろう。


情報管理としてのCMS

Special Report 表紙画像

日本では、「CMS」の“C”(コンテンツ)は専ら「Webコンテンツ」を指すものとして定着されている。だが、本来「CM」(コンテンツマネジメント)とは、「構造化データ」に加えて、そういった組織が抱えるデータの大半を占めるとされる「非構造化データ」までも一元管理することを目的とする。

その中で中心となる非構造化情報には、「企業コンテンツ」と呼ばれるOfficeファイル、PDF等の電子文書やCAD図面もあれば、イントラネット・公開サイトのWebコンテンツもある。「コンテンツ管理」とは、企業コンテンツとWebコンテンツを包含した組織全体に関わる“ 情報管理”とも言える。

情報管理-必要な時に必要な情報を活用できるようしておくことは、組織にとって永遠のテーマである。その追求は、紙文書の「文書管理」、マイクロフィルムが加わった「レコード管理」、電子文書も含めた「ドキュメント管理」、そして現在の「コンテンツ管理」と名前を変えながら脈々と続いてきた。技術、 時代が変わっても、目的は変わっていない。

ただ、組織を取り巻く状況は以前とかなり異なる点に留意すべきだ。

まず、今の時代、高いレベルの情報発信が求められる、情報公開を求める各種法令、社会の要請に基づき。正確な情報をタイムリーに関係者へ発信する。これには、情報に対するきめ細かな統制が不可欠である。

また、IT化が進んだ結果、以前と比べて取り扱う情報の種類が増え、量は膨張を続ける。最近は外部から収集する情報も多い。多種多様で膨大な情報を取り扱い、外部の異種システムとも連携可能な仕組みが求められる。

さらに、技術の移り変わりが激しいため、いつでも新しいシステム環境へ継承できる形で“ 情報資産”を整備していかなければならない。


情報アーキテクチャを考える

こうした状況の中で、多くの組織は“ 仕組み”としてのCMS構築を模索している。そのため、どうしてもツールに目が行きがちだが(CMSはツールに規定される部分はあるにせよ)、まずは現状の情報管理はどうなっているのかを点検。それを踏まえて、“ あるべき姿” は何なのかを検討し、いわゆる「情報アーキテクチャ」に配慮することが大切だろう。ただ実際には、情報アーキテクチャを考慮しないまま、ツールを導入しているため、CMS構築の効果が十分に得られていないケースが散見される。

アーキテクチャは全体を要素に分け、要素間のつながりを規定し、構造に秩序をもたらす。情報アーキテクチャで言えば、情報流通を滑らかにする分類やラベリングの基準、ナビゲーション、検索の仕組みが基本だ。

システムが情報へアクセスする際の“インタフェース”となる「メタデータ」の付与ルールを決めるのも、情報アーキテクチャにおける重要なポイントとなる。あらゆる情報が組織の枠を越えて縦横無尽につながる可能性を秘めた今の時代、メタデータの意義はもっと注目されてしかるべきだろう。


3つのプロセスで考えるCMS

確たる情報アーキテクチャがあって、はじめて効果的なCMSを構築できるが、そもそもCMSのプロセス自体は明快である。それは大きく言って、「Collect(収集)」「Manage(管理)」「Publish(発信)」の3つ。このプロセスをトータルに制御する仕組みこそがCMSと言える。人が作成したり、組織内外のシステムから取得したコンテンツのフォーマットを整え、リポジトリー(集積所)へ一元的に集約してから必要に応じて発信する。発信先にはイントラネットや公開サイトもあれば、ファイルサーバーや他システムのデータベースもある。あるいは紙出力の場合もあるだろう。この間のプロセス制御は、組織として定めたルールに則りワークフローで実施。ポイントで人が介在することもあるが、プロセスは自動化が図られていく。

CMSが機能していれば、1つのコンテンツを多目的に利用する「ワンソース・マルチユース」を実現したり、逆にWebと印刷物の両方で発信していた情報をWebに一本化するなど、コンテンツ発信の最適化が図れる。

もちろん、CMSはシステムだけで成り立つものではなく、情報アーキテクチャに即した運用ルールの徹底が重要だ。個々のコンテンツに関して、作成目的と要求仕様、作成者、閲覧者などを策定。前述のように、これらの要素をメタデータとしてタグを付ける。さらに、CMSに実装するワークフローやアクセス権を規定するなど、結局、人が効果を左右する面が大きい。


UIから考えるCMS

CMSではUIが持つ意味は大きい。CMSには、いくつかの立場に別れた多岐にわたるユーザーが関与するからだ。CMSに関わるユーザーの立場は「利用者」と「運営者」に大別できるが、一般に「CMS=Webコンテンツ管理システム」と狭義に捉えられているので、CMSのUIと言えば、利用者にとっての" 使いやすさ"と捉えられる。だが、運営者にとっての使いやすさも同様に重要だ。

仮に「CMS=Webコンテンツ管理システム」と捉えても、運営者側には作成者や承認者、サイト管理者がおり、それぞれの立場のユーザーにとって使いやすいUIになっているかどうか。例えば、テンプレートからコンテンツを作成するのには使いやすいUIであっても、承認者(作成者よりもITリテラシーが低いことが多い)が操作にまごついたり、多くのステップを経ないと承認作業を進められない状態では、CMSのUIとしては不十分だろう。

あらゆる立場、レベルの運営者にとって使いやすいUI、同時に利用者向けに求められるUI が、組織内でCMS 運用を定着させ、コンテンツ活用を促進するカギとなる。そもそも、企業コンテンツも含めた本来のCMSになると、運営者と利用者は分けられない。自らコンテンツを作成・登録することもあれば、検索することもある。CMSツールを選ぶ、あるいは自社開発する際は、多角的にUI の使いやすさを評価したい。

DESIGN IT! magazine』vol.1の特別企画「Special Report」を掲載しています。


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