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SDL Tridion CMSパッケージ「R5」
2008年8月27日 掲載
『DESIGN IT! magazine』vol.1の特別企画「Special Report」を掲載しています。
グローバル、セグメント対応迫られる 企業サイトの「マルチ展開」を強力支援
広範なグローバル化をはじめ、きめ細かい顧客セグメントや多様なメディアチャネルへの対応-現在の企業サイトはマルチな展開が求められている。欧州発のCMS「SDL Tridion R5」は、「ビルディングブロック」「BluePrinting」という独自テクノロジーにより、コンテンツを集中管理しながらも柔軟で低コストなマルチ展開を実現する。
アジア&中東担当
営業副社長
ハンズ・ド・グルート氏
日本法人
セールスディレクター
竹橋 幹司氏
オランダに本拠を置くSDL Tridion は、翻訳サービスを中心としたグローバル情報管理ソリューションを手がける英SDLインターナショナルが2007年5月、旧 Tridion を買収して誕生した。旧 Tridion の時代から、まずフォーカスした欧州のWCM市場において米フォレスター・リサーチからNO.1の評価を受けるなど、名実ともにトップに位置し、2006年からの米国進出も成功を収めていた。
そして、この3月、アジア進出の第一弾として日本市場に上陸した。キヤノンやリコー、ホンダ、ヤマハといった、グローバル展開する大手日本企業の欧州統括会社が、既にSDL Tridion のCMSパッケージ「R5」を採用。トヨタのようにグローバルではR5でCMSを統一しているケースもある。言うなれば、すでに日本の顧客を持っているというわけだ。
アジアパシフィック&中東営業担当副社長のハンズ・ド・グルート氏は次のように話す。
「我々のR5は、マルチなWebサイト展開に強みを持つCMSです。日本には、マルチ言語でのサイト展開を必要とするグローバル企業が製造業や航空、旅行業を中心に多くあります。また、それほどグローバルに展開する必要がない業態でも、金融機関のようにマルチターゲットのサイト運営を求めている業種があります。日本の潜在市場は大きいと見ています」。
独自アーキテクチャを支える2つの技術
域内に多くの国が存在する欧州(EU加盟国で27カ国、23の公用語)で生まれたCMSらしく、マルチ展開に強いR5は、「ビルディングブロック」と「BluePrinting」という2つの独自テクノロジーによって、ユニークなアーキテクチャを実現している。
図1 ビルディングブロックのイメージ
図2 BluePrintingによりローカルサイトを生成する
ビルディングブロックとは、「コンテンツ」や「レイアウト」「アプリケーション」「プロファイル」のブロック(モジュラー機能)を組み合わせてページを構成するもの(図1参照)。一般的なテンプレート方式のCMSでもコンテンツとレイアウトは分かれているが、R5の場合、レイアウトとアプリケーションも分離されているのが特徴だ。デザイナーはレイアウト、開発者はアプリケーションの作成に専念できる。
日本法人セールスディレクターの竹橋 幹司氏は「レイアウトにアプリケーションコードが組み込まれる 普通のCMS では、デザイナーがレイアウトを変更するのが難しく、ベンダに依頼せざるを得ません。R5ではデザイナーならアドビの『Dreamweaver』、開発者ならマイクロソフトの『VisualStudio』と使い慣れたツールをR5に統合して作業できます」と話す。
各担当者が作成したブロックはリポジトリーに集約され、専用ツール「Template Builder」のGUI操作で組み立て、バグを修正する。レイアウトやプログラムの修正も容易で再利用がしやすい。そして、作成されたテンプレートへコンテンツブロックをはめ込む。ここでは、「SiteEdit」により、Webページイメージ上で直接かつ簡単に編集できる。
もう1つのBluePrintingは簡単に言えば、「セントラルサイト」のコピーを生成して「ローカルサイト」へ展開し、サイト間で自動的に同期させる技術だ。ブロック構成もローカルに継承され、サイトコンセプトを統一したままマルチ展開を図りやすい(図2参照)。
コンテンツの言語を変えれば「マルチ言語」、同じグループでブランド別や企業別に展開すると「マルチサイト」、展開先にモバイルサイト、電子メール、印刷物(InDesign連携)を選ぶと「マルチチャネル」になる。また、仏ルノーでは、R5で構築したイントラネットのモデルから部門別サイトを多数展開しているが、モデルのコピーを生成するだけなのでユーザー部門の要望へ迅速に対応できているという。
つまり、BluePrintingを使うと、企業サイトあるいはイントラネットであっても、あらゆる種類のマルチ展開が容易になり、コストとリードタイムの抑制が期待できるというわけだ。
集中管理と権限委譲を両立させる
さらに、マルチ展開ではビルディングブロックの利点が発揮される。それは、継承したブロックを修正したり、独自に追加して容易にローカライズできること。「マルチ展開には、コンセプトは統一しながらもローカライズの裁量権を与えることが不可欠。R5なら裁量権も本部でブロック単位で集中制御できます」(竹橋氏)という。
ローカルへ継承する要素をブロック単位で、設定可能な点も便利だろう。例えば、セントラルとなる日本語サイトから英語サイト、中国語サイトを生成。2つのサイトからブロックを部分的に継承し、英語と中国語を併用したローカルサイトも立ち上げられる。
また、SDL インターナショナルの傘下に入ったことで、マルチ言語展開のサポートも強力になった。SDL 本体の翻訳マネジメントシステム「TMS」機能をR5へ統合したのだ。なお、SDL インターナショナルは2005年、米トラドスを買収し、翻訳メモリー(翻訳文をデータベース化して翻訳作業を支援するソフト)のデファクト製品を手中にしている。
「R5のコンテンツ作成ワークフローにTMSのワークフローが組み込まれたことで、コンテンツ作成と翻訳を並行して進められます。R5ユーザーは、マルチ言語展開の品質と生産性をいっそう高められるようになりました」(ハンズ氏)。
そのほか、R5はサイトにパーソナライズ機能も提供する。ユーザーIDなど明示的な属性、もしくはサイト上での振る舞いに応じたパーソナライズのルールを定義しておくと、コンテンツが動的に生成される。サイト訪問者をセグメントに分類して、それぞれに対して関心の高いコンテンツを動的に配信するマルチターゲットサイトの構築に役立ちそうだ。
ユーザー属性でパーソナライズする場合も、R5は全面的に業界標準(W3C 仕様準拠)のXML 技術をベースとし、APIにもXMLやWebサービス、Java、.NET等の標準技術を採用しているので、CRMシステムなどの基幹システムとSOAアーキテクチャによる連携もさほど難しくないはずだ。
日本企業に対しグローバルCMSを訴求
こうしたマルチ展開に強いという特徴があるからこそ、名だたる日本企業の欧州統括会社がR5を選んでいるのだろう。日系以外でもKLMをはじめとした航空会社やINGグループといった金融機関など、中堅・大手を中心に500社以上が採用している。
ただ、日本企業は国内サイトに限っては特殊な面がある。海外企業は企業サイトで、比較的にシンプルなデザインに基づき、グローバルに統一されたブランドイメージを訴求する傾向が強い。それに対して日本企業の国内サイトは、Flashコンテンツの多用に見られるようにデザイン性や機能性を重視、商品訴求を第一にしているところがある。
これについてハンズ氏は「日本企業の中にも、グローバルなブランド管理や情報管理の重要なメディアとして企業サイトを位置づけ、現地任せではなく、日本本社の主導でグローバルにコンテンツを管理すべきと考えている企業は増えています。今後も日本企業のグローバル化は広がると考えています。企業サイトの見直しは必ず起こってきます」と見る。
そのため、SDL Tridion は、企業に対してグローバルなブランド管理や、情報管理をコンセプトレベルから支援できるコンサルティング会社と業務提携を図る。同時に、「日本企業と関係が深いSI 企業とのパートナーシップを築いていきます」(竹橋氏)という。
SDL Tridion のR5は、同じく欧州発だった「SAP R/3」が日本企業のERP移行を決定づけたように、日本のCMS市場に旋風を起こせるか注目したいところだ。
『DESIGN IT! magazine』vol.1の特別企画「Special Report」を掲載しています。
関連情報
お問い合わせ先
- SDL Tridion 株式会社
- TEL: 03-5724-8750
- URL: http://www.sdltridion.jp [sdltridion.jp]
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