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情報のユニバーサルデザイン シャンプーのギザギザをご存知ですか?

2008年9月19日 掲載

DESIGN IT! magazine』vol.1のエッセー「Column」を掲載しています。

ユニバーサルデザイン(UD)というと、ハードやソフトを思い浮かべがちだが、ユーザーがUD製品を使いこなすために忘れてはならないのが情報伝達である。

UDの例として、視覚障害者でもシャンプーとリンスを識別しやすいように、シャンプーのボトルにギザギザが付いていることが挙げられる。だが、このことを知る一般消費者は数少ない。誰かと雑談の折があるたびに、「シャンプーのギザギザをご存じですか」と聞いてみているのだが、知っているという人は、私が聞いた範囲では1名の全盲の方だけだった。

シャンプーのギザギザは、ギザギザが付いているという情報とセットでないと意味を成さないのだが、そのギザギザ情報が一般に普及していないのだ。視覚障害者、それも先天性の障害の人のみに聞いた場合は知っている人も多いかもしれないが、視覚障害の多くは高齢に伴う中途障害だ。

そして、視覚障害に限らず、中途障害、特に高齢者には、UD情報は伝達されにくい。自らが障害を持っていなければ、そのような情報に無関心だし、また、障害者関連のコミュニティへの参加率も低い。このような人たちが、なんらかの障害を持った時、自分に便利な製品情報に気付くのには困難を伴う。

また、UD製品の開発・提供元のユーザーへの告知方法も、当事者事情に合わない場合がある。視覚障害者のうち点字を読める人は約1割、聴覚障害者のうち手話ができる人は約1.5 割程度とみられる。もちろん点字や手話を使いこなしている人にとっては重要な情報取得・伝達、コミュニケーション手段であり、手話は言語文化としても認められている。だが、点字も手話もできない人が大多数であることを念頭においていないと、点字を製品に付ければ、手話で説明すれば良いといった安易な解決策を求めることになる。点字よりは音声が有効な場合もあるし、手話よりは筆談や文字説明が有効な場合もある。

「情報弱者」にこそ役立つ製品やその情報が必要

さらに、障害者コミュニティにも属さず、ひとり自宅に閉じこもっている様々な障害の人たちに「あなたの生活にとってこのように便利なモノがあります」と伝えるには、より困難が伴う。インターネットでの情報発信が進んでいるが、ネットを十分に利用できない人もいる。PCより普及率が高く操作が容易な携帯電話、さらに、より古くから家庭に普及しているテレビやラジオ、紙媒体、このような各メディアを通じてのUD製品の告知が、今のところは必要だがコストがかかる。

同じ障害者、高齢者といっても、ネットなどで専門家以上に情報収集し、公的な助成金などもうまく活用している「情報強者」もいれば、何の情報も持たない人もおり、この情報格差が問題となっている。そして、「情報弱者」こそが、本来は、より切実に自分に役立つ製品や情報を必要としている人たちなのだ。製品は開発すれば終わりではない。広範囲な人に活用されてこそ意味がある。そのためには、製品情報自体をいかに効率的にUD化して伝達するかを考えることが、UDに携わる者全員にとっての大きな課題だろう。


DESIGN IT! magazine』vol.1のエッセー「Column」を掲載しています。

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