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自治体Webサイトのユーザビリティ評価 ユーザー視点の設計をペルソナ法で学ぶ

2008年11月14日 掲載

DESIGN IT! magazine』vol.1の特集「Feature-2」を掲載しています。

「使いやすい」Webサイトとは何だろうか。NPO法人・人間中心設計推進機構(HCD-Net)では、 「地方自治体Webサイトのユーザビリティ評価(引越部門)2007」(地方自治体Webサイトのユーザビリティ評価2007)の中で、300以上の自治体のWebサイトをユーザビリティの観点から評価し、その結果を発表した。ここで特徴的なのが、最近、有効なユーザビリティ評価法として注目が集まっている「シナリオ・ペルソナ法」を使っている点だ。Feature-2では、このHCD-Netの取り組みを通して「シナリオ・ペルソナ法」をWebサイトの診断に使う方法を学ぶ。また、ユーザビリティ評価2007で優秀サイトに選ばれた、各サイトのポイントについても探っていく。

ユーザー視点から使いやすさを評価するには

Webサイトの評価に使われる代表的な手法
マーケティング分析/評価
  • アクセスログ解析
    • コンバージョン分析
  • 競合分析
  • 顧客満足度調査
    • アンケート調査
    • グループインタビュー
パフォーマンス分析/評価
  • サーバーログ分析
ユーザビリティ評価
  • ユーザビリティテスト
  • ヒューリスティック評価
  • ユーザー調査
  • ユーザビリティアンケート調査
    • アイトラッキング分析
  • その他評価
    • ペルソナ法
    • シナリオ法
経営管理指標による評価
  • ROI(投資資本利益率)
  • ROA(総資本利益率)
  • ROE(自己資本利益率)
  • その他評価
    • ORI
      (Online Relationship Improvement:CRM等のオンライン投資の評価)
    • MVT
      (Measuring the Value of Technology:技術要素の価値評価)

Webサイトの「使いやすさ」を効果的に調べるにはどうすれば良いのだろうか?

Webサイトを評価する一般的な方法には、ユーザーへのインタビューのような方法もあるだろうし、アンケートやアクセス解析で定量的に調査してページ間の動線を検討することもあるだろう。現在、代表的なWebサイトの評価手法としては、右の表にまとめたような多くの手法が知られている。

では、この様々な手法の中で、「使いやすさ」についてユーザーの視点から評価する方法として有効なものはどれなのだろうか。

まず、最初に考えられるのはユーザーインタビューだろう。Webサイトの評価であれば、サイトを訪れるユーザーに直接インタビューしたり、逆にサイトを使っていない人には「どこが問題ですか?」と質問することなどが考えられる。ただし、この方法の場合、調べたり分析するのに時間や費用を要し、一方で調査に適切な人が集まらず、適切な結果がまとまらないケースも少なくない。

そこで、最近よく利用されているのが、「シナリオ・ペルソナ法」だ。これは、対象となるユーザーを代表する架空の存在「ペルソナ」に、実際のユーザーの代わりとなってもらい、そのペルソナがどのように振る舞うのかを検討していくという手法だ。この方法はWebサイトや製品についてのユーザビリティ評価だけではなく、マーケティングの分野でも活用されている。

例えば、ユーザビリティを評価する際には、「そのペルソナならこんな時には、どのように対応するだろう」というタスク分析の観点から、この手法を導入する。一方、マーケティングの分野で使う場合には、統計データに基づいて分析されたユーザーの代表として「こういうペルソナに対して、我々はどんなアプローチができるだろう」というように、コミュニケーションやブランドイメージを構築するために利用する。

前者の場合、そのペルソナはユーザーの目的や目的達成までの行動を網羅的に定義できるかどうかが重要であり、そのためには過去のユーザーの観察や現在のユーザーの声が大事になる。一方、後者では購買履歴やアンケート、ログといったデータについて、しっかりと裏付けをとること。そして、その上でユーザーの代表としての特徴をしっかりと押さえているかがポイントとなる。

ペルソナを使った評価では、「専門家の視点」からは気づかなかった発見があったり、「ユーザー視点」からの企画の検討が比較的簡単かつ、短期間で可能になる。そして何より、ユーザーの都合に関わらずいつでも実施できる。そのため現在では、多くの企業で企画開発の過程にペルソナ法が取り入れられるようになってきている。

NPO法人の人間中心設計推進機構(以下、HCD-Net)では、この「シナリオ・ペルソナ法」を使った「地方自治体Webサイトのユーザビリティ評価(引越部門)2007」(以下、ユーザビリティ評価2007)を実施した。

次のページからのPart.1では、この取り組みの進め方と優秀サイトのポイントについて、明らかにする。

Part.2では、自治体サイトの引越し関連情報を対象にして、「シナリオ・ペルソナ法」の進め方について、4つのステップに分けて紹介する。自治体サイトの評価を例にして説明しているが、自社や自らの組織が立ち上げているWebサイトを診断する際にも十分に参考となるだろう。

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DESIGN IT! magazine』vol.1の特集「Feature-2」を掲載しています。


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