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Part.2 はじめてだって難しくないシナリオ・ペルソナ法の進め方

2008年11月14日 掲載

DESIGN IT! magazine』vol.1の特集「Feature-2」を掲載しています。

基本タスク表

今回のユーザビリティ評価で実際に使用されたタスクリストを紹介する。
このタスクリストをもとに、実際に自治体サイトを評価してみよう。

ペルソナに共通のタスクで評価する
  • これから先に住む住宅について知る
    • 賃貸情報について知る
  • 必要となる行政手続きについて知る
    • 住民票、転入手続きについて知る
    • 国民健康保険に関する諸手続きについて知る
  • 生活インフラ手続きについて知る
    • 水道、電気、ガス、電話、インターネット手続きについて知る
    • ゴミの分別について知る
  • 自動車管理の手続きについて知る
    • 車検の変更
    • 自動車税
    • 車庫証明手続きについて知る
  • 金融機関の変更手続きについて知る
    • 郵便局、銀行、カード会社に関する手続きについて知る
各ペルソナごとのシナリオにそったタスクで評価する
超多忙な独身ビジネスマン
  • 電子申請などを使って自宅でできる、手続きについて知る
  • 原付自動車に関する手続きについて知る
新婚新築カップル
  • これから先に住む住宅について知る
    • 不動産取得に関する諸手続きについて知る
    • 金融融資について知る
  • 必要となる行政手続きについて知る
    • 印鑑証明手続きについて知る
    • 入籍について知る
  • 国民年金に関する諸手続きについて知る
  • パスポート手続きについて知る
子育て家族
  • これから先に住む住宅について知る
    • 金融融資について知る
    • 周辺地域情報について知る
  • 必要となる行政手続きについて知る
    • 印鑑証明手続きについて知る
    • 子供が通う学校に関する諸手続きについて知る
    • 子供を預ける幼稚園や保育園に関する情報と諸手続きについて知る
    • 保健所について知る
    • 子供がかかるホームドクターについて知る
    • 児童手当手続きについて知る
    • 乳幼児医療費助成手続きについて知る
障がいを持つ高齢者
  • これから先に住む住宅について知る
    • 不動産取得に関する諸手続きについて知る
    • 金融融資について知る
  • 国民年金に関する諸手続きについて知る
  • 必要となる行政手続きについて知る
    • 印鑑証明手続きについて知る
    • 老人保健法による医療に関する諸手続きについて知る
    • 老人医療費の手続きについて知る
    • 高齢者に関する助成の諸手続きについて知る
    • 高齢者の納税について知る
    • 身体障害者手帳の変更について知る
    • 介護保険に関する諸手続きについて知る

「シナリオ・ペルソナ法」の進め方を具体的に見ていこう。

シナリオ・ペルソナ法には大きく4つのステップがある。それぞれのステップでは、以下に紹介するいくつかのコツもある。何度でも各ステップを繰り返し試しながら、それぞれのプロジェクトに適したペルソナと出会ってほしい。

最近の先進企業では、出会うことができたペルソナをパネルにしたり、中にはマネキンにしたり、風船にペルソナのプロフィールを貼り付けて浮遊させるなど、皆から見えるところに配置する試みも増えている。これらは、常に自分たちの製品・サービスをペルソナ視点で見直そうとする姿勢の表れだ。

読者の皆さんもペルソナと出会うことができたら、「このサービスは、彼や彼女ならどう使うのか」と、いつも語りかけ、その声に耳を傾けてほしい。

以下、ユーザビリティ評価2007におけるシナリオ・ペルソナ法の進め方を例に、4つのステップを順に追ってみよう。

1. ユーザー像を調べよう

「ぺルソナをつくる」といっても、勝手に理想のペルソナを創り上げてしまうと、正しいユーザビリティ評価のためのペルソナ法とはならない。

Webサイトのユーザビリティ評価であれば、どのようなユーザーがサイトを訪れるのか、まずはアクセスログやユーザーアンケートなどを使って、調べてみることが大切だ。同時に、実際のユーザーの「利用状況の把握」や「振る舞いの観察」も欠かせない。

こうして集めたユーザー情報は、「年齢」「性別」「家族構成」「ITに詳しいのか」などの大まかな尺度で簡単にチャートにすると、分かりやすくなる。このチャートから、「どんなユーザーが多いのか」、「どんなユーザーに来てほしいのか」といったユーザー層が見えてくる。また、こうしたユーザー属性を客観的に判定する手法も開発されている。それらを活用して、チャートのマトリックス上に分類し整理してみよう。

2. ペルソナをつくろう

いくつかのユーザー層をセグメント化してマトリックス上に捉えたら、それぞれのユーザー層を代表するユーザー像を具体化していこう。これが、「ペルソナ」になる。

年齢や性別、家族構成から、どのように成長してきて、今は何をしていて、どんな趣味で、どんなメディアによく接しているのか。こうした具体的な属性や顔写真を用意することで、イメージを鮮明にしていく。

ペルソナを具体的にイメージできるようになれば、「自分のサイトにどんなユーザーが来ているのか」(顧客情報)を把握したり、「そのユーザーに何を提供したら良いのか」(企画)を考えることができ、「ユーザーの体験をひろげるための工夫」(開発)を実装し、「一貫したユーザー像」(評価)を担当者の間で共有できるようになる。

3. シナリオをつくろう

次に、設定したペルソナがどのように行動するのかを「シナリオ」にまとめていく。

といっても、ドラマのように長いストーリーを描くわけではない。まずは、「毎日のようにおこなう目的についてのシナリオ」「ときどきおこなう目的についてのシナリオ」「めったにおこなわない目的についてのシナリオ」という視点から考えてみよう。

今回の地方自治体のサイトの評価では、「引越し」という目的を解決するためのシナリオを設定したが、調べたい内容によってシナリオは変わるだろう。ペルソナの属性をもとに、ペ ルソナになって考えてみよう。

4. タスクから評価しよう

シナリオができ上がったら、そのシナリオを実行してゴールにたどりつくまでの具体的なタスクを検討してみよう。

このタスクを評価したいWebサイトを対象に各ペルソナに成り代わって実行し、そこに何か問題点があるのか観察し、あるとすればどういった問題なのかを考えてみよう。もしも、これからサイトを立ち上げようとしているのであれば、スケッチで描いたカード状のサイトやプロトタイプサイトを作成しても良いだろう。ここでは、ペルソナ担当とシナリオを読み上げる担当、そしてペルソナの振る舞いを確認する担当を 置くことがポイントとなる。

このようにタスクごとの問題点を評価し、その優先順位をつけていくことで、使いやすいWebサイトへの改善点や企画のためのタスクリストが得られる。あとは、タスクリストにしたがって改善あるのみだ。


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