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コンテンツマネジメント– Webの背後にある魔法
2009年7月31日 掲載
「新製品について、Web ページに掲載する必要があるホワイトペーパーは、いまどこにあるんだ? ジャンが書いているんじゃなかっただろうか。彼女はもう書き終えたのだろうか? 書かれたものを承認するのはトムの役目だったはずだ。ジャンは、すでに彼に渡しているのだろうか? 金曜の午後5時までには、Web サイト上にあのホワイトペーパーを掲載しないといけない。締め切りに間に合うかを確認するために、彼女に電話をしてみないといけないだろう。それに、いまトムは出張中だ。彼は電子メールを読んでいるのだろうか…?」
ここに書いたシナリオに親近感を覚えたのなら、もっとも単純なコンテンツが対象あっても、それを管理するためには必ずついてまわる問題について、あなたにはすでになじみがあることになる。組織の従業員が10人だけだろうが何千人といようが、コンテンツは魔法を使って出来上がるものではない。残念なことに、Web CMS を開発する人たちの多くは、Webマネージャのところにコンテンツマネジメントシステム(CMS)が届くまでは、コンテンツにはライフサイクルがないと信じ込んでいる様子だ。
そんな誤った想定に反して、CMS が用意される前であっても、コンテンツには長い、ときには入り組んだライフサイクルがある。しかしながら、かなり多くの組織において、そのライフサイクルは誰かのハードディスク上から始まり、管理されることがほとんどない状態で残存しているのが実情だ。典型的な例で言うと、ホワイトペーパーを用意する責任があるジャンの手によって、コンテンツの執筆が開始される。彼女は、ある製品で使われている先端技術に詳しい SME(Subject Matter Expert:特定主題に関する専門家)ではないため、それに関する知識を持つ人を探し、その人たちのハードディスクや部門サーバー上に置かれたあらゆる情報のコピーを集めることから始めなければならない。たいていの場合、原資料の小さな集合は、SME からコンテンツ作成者へ、電子メールを介して送られる。そうして、原資料は2部存在することになってしまう。1部はSME のハードディスクの中、もう1部はジャンが準備中のドキュメントの中だ。SME が原資料に何らかの更新を加えたときに、ジャンがそれに気づくことができるとすれば、それは単に「運が良かったから」ということになるだろう。
コンテンツへのアクセス
コンテンツマネジメントを行う場合は、ホワイトペーパーが企画された時点で速やかに、SME のハードディスク上にある原資料がコンテンツデータベースに登録される。そのコンテンツを分類したり、コンテンツの原著者までさかのぼって調べたりするのに便利なように、適切なラベルを付ける必要もある。(メタデータの利用による)コンテンツの分類は、企業の利益と関心事を促進するためのスキーマに従うものであるが、その分類スキーマには、商標、製品のモデル、バージョン、地理的情報、言語といったことに関するデータだけでなく、著者についての管理上の情報も含まれるに違いない。
ジャンのような著者は、ホワイトペーパーの執筆作業を開始した時点で、作業領域内で "仮想的な" 場所を指定することになる。ホワイトペーパーが出来上がるまでの間、全ての原資料は作業領域の中でカタログ化されて用いられる。緊急事態が発生した時には、ジャンの仕事を引き継ぐ人が出るかもしれない。しかし、誰がその役割を担うことになったとしても、その人は、複数の部門を追いかけて回ったり、不明瞭なサーバー領域にアクセスしたり、原資料のありかを知っている人を探したりすることなく、どこで関係資料を入手すべきかを正確に把握できるようになるのだ。
しかし、これに異論を唱える人もいるかもしれない。「作業領域やフォルダーにラベルを付ければ、コンテンツマネジメントなしでも原資料を制御できるのではないか?」「はたして、コンテンツマネジメントの何がさらに優れているというのだろうか?」といった具合に。
ジャンの作業領域の件は、コンテンツマネジメントに関する大きな問題のうちのほんの一部だ。たいていの組織において、何万ものファイルを格納しているフォルダーが何千個も存在している。そして、それらのファイルの多くは、複数進行中のプロジェクトで適用できるようなものだ。ファイルとフォルダーのラベルが管理されていない状態で検索を行い、有効な結果を生むこともまれにはある。それは、ことわざで言うところの「干草の山から1本の針を見つけ出す」ことを意味するが、ここでは、干草の山が1つだけでなく何百も存在しているのである。
CMS は、個々のドキュメント1つ1つに、または、粒度がもっと必要であればドキュメント内にある要素の1つ1つにまでも、メタデータを割り当てるメカニズムを提供するものだ。よく知られているように、メタデータの多くは、著者、主題、日付といったデータを特定するために必要とされるものであり、その結果、著者は自動的または半自動的に、あらかじめ定められた1セットの中から必要な情報を選択できるようになる。
また、自動的にコンテンツ分析や分類を行うツールも、コンテンツマネジメント市場に強力に切り込んでいる。こういったツールは、原文分析やドメイン分析といった機能を用いることでコンテンツを解析し、ラベル付けを行うことを目的とするもので、ときには複雑に入り組んだ文脈をもつアルゴリズムを含むものもある。しかしながら、分析の自動化には限界があることは念頭においてほしい。もしも執筆環境を自分自身で制御できるのであれば、執筆支援を目的に、自分できちんと計画して作ったタクソノミー(分類法)を使用して維持する方が、もっと簡単かもしれない。
ワークフロー
ホワイトペーパーの執筆に取り組んだジャンは、SME たちにそのコンテンツをレビューしてもらうために送付し、その後、承認権限を持つプロダクトマネージャに送付することになる。草稿の準備ができたら、彼女はその原稿を再度チェックしてステータスを更新する。自動化されたワークフローシステムでは、電子メールによる通知を介して、適切な関係者間で原稿が回覧される。例えばブレイクは、自分が関与した製品が議論されているホワイトペーパー内の箇所が、すでにレビューの準備ができていることを知らされる。彼は自動的に送られてきた電子メール上のリンクをクリックし、あるドキュメントをチェックアウト(ブレイクがレビューしている間は、他者がコンテンツを使用できないように安全な状態にすること)状態にして、Acrobat で原稿を開く。ブレイクはその原稿を書き換えて、メモを付け加えるためにオンラインコメント機能を使う。その作業を終えたら、原稿をチェックインしてシステムに戻す。ワークフローはその後、修正結果を承認したり拒絶したりすることができるジャンの元に送り返し、彼女が改訂版を作成する。
多くの組織において、自動化ワークフローは素晴らしい生産性向上につながるものだ。しかし、もしあなた自身が様々な CMS を評価する立場なら、ワークフローの製品には様々なものがあることを知っておいてほしい。単純な作業だけが許可されていて、後から開発できるワークフロースクリプトの数が制限されるものもある。複雑なワークフローがすでに存在していて、その使い勝手を拡張するためにカスタムプログラミングを行うような場合は、競合製品を評価する前に必ず、自分の求める機能がどんなものかを包括的に記述した「要求定義書」を準備するようにしてほしい。
バージョン管理のサポート
ジャンは、ホワイトペーパーを会社の Web サイトで公開する前の最終承認にまわす準備が出来ている。彼女は原稿が完璧であることを確認し、ワークフローシステムがマーケティング担当役員に送信する。その後ジャンに戻された原稿には、「このホワイトペーパーで、より強力な ROI 分析に関する内容を読めるようにしてほしい」という担当役員からの指示が書き込まれている。ジャンは、直前のバージョンにその ROI 分析の話を含めていたのだが、エンジニアたちから寄せられたコメントに従って削除することにしていたのだ。彼女は CMS を使って、ROI 分析に関する記載を削除した際のメモが書いてあるバージョンを追跡して探し出す。それから最新バージョンの原稿に、ROI に関するセクションを付け加える。それをもう一度担当役員に送付し、すぐに承認をもらう。彼女はバージョン管理機能を借りることで、自分自身の時間を節約し、簡単に修正できたことになる。
バージョン管理やチェックイン・チェックアウト機能が持つセキュリティは、スタッフに柔軟性と安全性を提供するものだ。この柔軟性と安全性は、コンテンツがイントラネットやインターネットに提供されるずっと前の、ライフサイクルを開発する途中のコンテンツ管理に必要なものである。
コンテンツマネジメントは、Web 上で発行される情報をサポートするだけでなく、完全に組織内だけで扱われる情報のライフサイクル開発もサポートするものだ。コンテンツの著者たちは、自分の情報の安全を確保しながらも、その情報をワークフローの中で他者が利用できるようにして、組織内の事業活動を促進するのに必要な情報へのアクセス経路を提供することになる。
どんな組織においてでも、ある部門で作られた情報は、他の大部分の部門の事業活動に対しても極めて重要なものだ。しかしほとんどの場合、その情報を探し出すことが難しい状態にある。一般的に、コンテンツは膨大な数の電子メールを介して交換される。電子メールを交換するたびに、その背後では、情報を要求したり、他者からの要請に答えるためにスタッフ1人ひとりの時間が費やされるということになる。
カオス状態にあるコンテンツのコスト算出
こういった非生産的な活動には、どれだけのコストがかかるのだろうか。きっと想像するよりも多くのコストがかかっているに違いない。控えめに考えても、スタッフは、コンテンツを探し、それを他の人に提供するために自分の時間の5~10パーセントを費やしているだろう。組織において、5~10パーセントの人々が費やす時間のコストはどれだけなのだろうか。たとえ中心的なスタッフによって費やされる時間だけを計算するとしても、中規模な組織の中で失われる生産性の対価はあっという間に数百万ドルを超えるに違いない。
さぁ、コンテンツマネジメントがあなたの将来に見えてきましたか? もし今日はそんな気がしないというのなら、考え直した方がいいでしょう。
この記事の原文「Content Management – the Magic behind the Web」は、2002年1月24日に webreference.com [webreference.com]に掲載された。
本サイトに掲載している記事は、著者の許可を得て、翻訳・転載しているものです。
関連サイト
- Comtech Services, Inc. [comtech-serv.com]